8. 茨城県つくば市上郷「松田農園」

松田聖史さん(ニンジン、枝豆、サツマイモ農家)が 見つけだした自分に合う農業のありかた

旅や人の出会いの中で自分に合う農業を見つけ出した松田さん。松田さんの「これまで」と「これから」のことを聞いてきました! (聞き手/取材班・吉成 香貫花)

人物紹介

松田まつだ聖史きよふみさん(松田農園経営者)

福島県出身。6年間、バイク・車で旅をした後、つくばで農業を始める。現在就農10年目。有機ニンジン・枝豆を中心に栽培。今後はサツマイモ栽培を展開していく。

取材班

インタビューよろしくお願いします! 松田さんは6年間バイクや車で旅をされていたと聞きました。きっかけは何でしたか?

松田さん

最初は会社員をしていたのですけど、人間関係に疲れてしまって。なので(出身の)福島県から出たいとなって。バイクや車は一つの手段でした。

取材班

そうだったのですね! 旅をされているときから農業に興味はありましたか?

松田さん

そんなことはありませんでした。就農するかを考えるきっかけは森口君からでしたね。森口君とは北海道の漁業関連の住み込みバイトの時に出会いました。最初は仲良くなれなさそうだなって思っていたんですけど(笑)でも同じ部屋になって話すことが増えて。そこで森口君が農業学校に行くと聞いて。そこで自分もそろそろ今後のことを考えていかなきゃってなりましたね。

取材班

森口農園さんとは旅の中での出会いだったのですね! その後松田さんはどんなことをされたのですか。

松田さん

僕はその後、静岡の茶畑農家で働いていました。そこで働いているときに、富士山見ながら外で作業することが楽しいって思っていました。僕には日光を浴びながら作業することが合っていたんでしょうね。

取材班

静岡で就農せず、なぜつくばにきたのですか?

松田さん

これも森口君で、つくばで農業するから来ないかって誘われたんですよ。つくばに就農した理由はそれだけです。その後、僕は1年法人農家、その翌年に石田農園さんで1年働いてから独立しました。最初の法人農家では薬剤散布で一日終わる日もあって身体的にしんどかったです。それもあって石田農園さんの有機農法を学んで自分にはこっちのが合うなってなりました。

取材班

複数の農家さんから学び、自分の農業のやり方を確立していったのですね。

松田さん

僕は特別栽培(注)でニンジンを作りました。最初は石田農園さんを参考にやっていたんですけど、途中からダメで。作る場所、作る人が違うので全く同じ作り方では限界がありました。だから土壌診断を行って、そこから自分で試行錯誤して改善させていく日々が始まりましたね。
(注)その農産物が慣行レベルで使われる農薬と化学肥料より50%減らして栽培する方法

取材班

ニンジンから新規就農がスタートしていったのですね! 新規就農者が苦労する土地・売り先等で苦労した点はありますか?

松田さん

土地は石田農園さんが声かけてくれて、問題なく貸してもらえました。売り先は収量が少ないので直売所に直接お願いに行きました。僕が最初に苦労したのは雑草問題です。特別農法なので雑草が多く生えてしまうので、だから周りの方に注意されるんですよ。特に石田さんに(笑)石田さんの弟子ってことで貸してもらっているので仕方ないことですね、ちゃんと刈るので~と言いながら頑張っていました。

取材班

なるほど! 特別農法ならではの苦労点ですね。土地に関しては自分が農業していきたい土地で研修を受けたメリットにも感じられますね。ニンジン以外で作っている作物はありますか?

松田さん

ニンジンが作れなかった土地では枝豆を作っています。枝豆も特別栽培で作っています。枝豆って儲かりにくいからあまり作られないんですよ(笑)でも作っている農家がいない分、喜びの電話を直接いただくことが多いです。うちもそんなに儲かってなかったんだけど、電話もらうと「これは辞められないな~」ってなりますね。枝豆を続ける意味があるかなって思います。

取材班

素敵なエピソードですね! 夏になったら松田農園さんの枝豆要チェックですね! 他に作りたいと考えている作物はありますか?

松田さん

サツマイモですね。僕は今後、贈答品向けの農作物を作っていきたいなと考えています。今年から圃場整備(注)があり農地が規模拡大するので、そこでサツマイモを作りたいなって。
(注)県や国で行われている公共事業。土地の整備などが行われ、より効率的な農作業ができることを期待される。

取材班

そうなのですね、規模拡大に向けて考えていることはありますか?

松田さん

規模拡大したら取引先を増やしたいですね。拡大すれば取引先も相手してくれると思うので。サツマイモだと専門の卸売業者もいるのでそこにも出荷できたらと考えています。

取材班

今は直売所のみに出荷しているのですか?

松田さん

今は直売所とスーパーなどに出荷しています。スーパーでは1つの店舗で通ると紹介状を書いてもらえるので、別の店舗にも出荷がしやすくなります。
あと大量生産している農家さんが直売所に頑張って安く大量に出荷されると、新規就農者への影響が大きいんですよ。だからある程度規模が大きくなったら、直売所だけでなく次のステップにいかなきゃいけないと思います。

取材班

次の新規就農者のためにも新たなステップへ…! 素晴らしい考え方ですね。

取材班

松田さんが農業で大事にしている・大事にしていきたいことは何ですか?

松田さん

環境に配慮した農業をできればいいなって考えています。一番大切にしていることは「安心・安全」であることですね。だから公表する必要があると思い、ホームページに作り方や特別栽培について載せています。
二つ目においしい野菜を作ることを大事にしています。僕は作りづらくて単収が低い野菜でも、おいしく作るために妥協せず難しいこともやっていきたいですね。
三番目に大切にしていることは、見た目です。特別栽培はやっぱり慣行農法より見た目が悪くなりがちなんですよ。でも特別農法だから見た目悪くてもいいでしょって言いたくないですね。

取材班

ありがとうございます! 確かにインタビューするにあたってホームページも丁寧な印象がありました。ホームページも松田さんが作ったのですか?

松田さん

そうですね、家族に手伝ってもらいながら。他にも名刺の絵は僕が書いて、シールはお姉さん。インスタや広報は奥さんがやってくれています。

取材班

家族総出で松田農園を盛り上げているのが素敵ですね!

取材班

松田さんは今後の将来はどうしたいと考えていますか?

松田さん

20年後も家族が楽しく暮らせていればいいなって思います。あと最近は異常気象も多くて野菜作りも大変になっているので、もう少し環境に特化した農業も出来たらなって思います。まだまだ答えが見つからない状況ですね。20年後未来がいい方向に進んでいればいいなって思います。

取材班

最後にワニナルプロジェクトでは「農業×クリエイティブ」で盛り上げていきたいと考えています。松田さんはクリエイティブと聞いてどんなイメージを持ちますか。

松田さん

同じ業種の中で、一つ上を進んでいる商品を作っている方とかクリエイティブって感じがしますね。みんなより上を見て作っている感じがします。

インタビューありがとうございました!インタビューしていると松田さんの人柄がにじみ出ているなと思いました。

ファームプロダクツファイル

①作っている代表作物

●ニンジン

●枝豆

●サツマイモ

●サラダカブ

②農業を始めたい人に

自分は人間関係に疲れて、自分に出来る仕事がないって思っていた時に農業を見つけた。自分でもできたから、やりたいならやってみてほしい。

この記事を書いた人

吉成 香貫花 YOSHINARI KANUKA

茨城県内の大学に通う大学生。祖父が作ってくれた農作物に感動し、「農家のためにできることは?」の答えを求め農学部へ。学びを深める中で、「実際に就農している方の声を聞きたい」と思っていたところ青木と出会い、「ワニナルプロジェクト取材班」に参加する。農業を始めたいけど勇気が出ない。そんな方を後押しできる記事を作りたいと意気込む。