4. 茨城県つくば市面野井「たかや農園」

高谷浩太さん、良子さん(シイタケ農家)の継承されていく農家への道

今回取材したのは、歴史ある原木シイタケを引き継いだ高谷さん夫妻。やっぱり両親が農家だと継ぐことは考えたのか? 子供には継がせたいか? 素朴な疑問をぶつけてみました。 (聞き手/取材班・吉成 香貫花)

人物紹介

高谷たかや浩太こうたさん、良子よしこさん(たかや農園経営者)

一般家庭で育った高谷浩太さん、長年続く原木シイタケ農家の末っ子の高谷良子さん。2人は東京農業大学で出会い結婚。各々社会人を経験し、良子さんの実家の原木シイタケを継ぎ現在就農3年目となる。原木シイタケや柿などを直売所やネットで販売する。

取材班

よろしくお願いします。さっそく質問なのですが、やっぱり両親が農家だと継ぐことは小さい頃から考えていたのですか?

良子さん

家で農業をやっていて、小学生の頃からお小遣いもらえるから手伝っていたりしました。でも農家になるなんて考えていなかったです。

取材班

では、農業大学に決めたときに農家になろうとしたのですか?

良子さん

当時バイオセラピーについて学べる学科があり、自分が動植物を好きだったことと学科で学べる内容が面白そうだったから東京農業大学に決めました。大学入学当初も、農家が恥ずかしくて絶対ならない! って思っていました(笑)でも大学に入って、私に農家をオススメする教授や、親が農家をしている友達との出会いで、農家も悪くないって思えてきた。そのころから両親からの期待もあったので農家への抵抗が少しずつ変わっていきました。

取材班

なるほど! 大学時代の出会いで心境が変わっていったのですね! 卒業後はすぐに農家になったのですか?

良子さん

いつか継げればいいかな~って感じだったので、卒業後は植物に関われる造園会社で働きました。職人として刈払いや木の剪定など今でも役立つことを学べましたね。

浩太さん

僕は卒業後、印刷会社の営業を3年していました。そのあと実家のビルメンテナンス会社の手伝いを3年していましたね。

良子さん

私も造園を3年務めて、そのあと茨城に戻って別の仕事をしていました。その2年後に結婚してね(目くばせ)。

取材班

お二人とも社会人として経験して、農家になったのですね! いつ頃お父様から良子さんにバトンタッチされたのですか?

良子さん

3年前の私の父が脳梗塞で倒れてしまって、そこから農業戻ろうかってなりました。

取材班

浩太さんは農家を継ぐことに抵抗はありましたか?

浩太さん

そこまで深く考えていなくて、継ぐというより助けようという思いが強かったですね。

取材班

そこから夫婦での農業が始まったのですね・・・! 実際に始めて苦労した点とかありましたか?

浩太さん

それまで農業経験がなかったので右も左もわからない状態だったので、最初の1年はこれまでのやり方を真似していくことから始めました。3年たった今は、色々考えることが多くなりました。なんでこうなるのだろうって不思議なところがあるんですよね。例えば、柿の実り具合の違いとか。そこで新たなやり方で挑戦します。失敗したらなんで失敗したか考える、大変だけど疑問や課題を紐解いていくのが面白い部分でもあります。

良子さん

私も親の手伝いで現場を見てきたので流れはわかるけど難しいですね。ハウスの湿度・温度管理やしいたけの出始める温度については、親が長年の感覚でやっている部分なので私達はまだまだ勉強中です。苦労もあるけど、植物が好きっていうのもあって植物と触れ合う作業の時間はやっぱり楽しいですね。

取材班

ちなみに新規就農制度など利用しましたか?

浩太さん

使わなかったですね。どちらかというと制度の利用を意識してなかったので調べなかった感じです。土地や資材はあったので、役所に相談しないと始められない状態ではなかったのもあります。実際に行った手続きは開業届とかですかね。

取材班

なるほど、では売り先なども決まっていたのですか?

良子さん

両親が出荷していた直売所で販売しています。他にも今はアプリやインスタグラムでも購入できます。しいたけ、特に原木しいたけは安定的に出荷するのが難しい部分があります。昔は卸していたこともあったのですが、今は近くの直売所だけですね。直売所は近くて楽ですし、自分で値段を決められるので、いいなって思って使っています。

取材班

新規就農でも、継ぐ場合ならではの特徴がありますね。

取材班

やっぱりお子さんに継いでほしいって思いはありますか?

浩太さん

将来的にはやりたいって思うならやってもいいのかなって思います。でも外で怒られることの経験をしたほうがいいと思うので、最初は違う会社で働いて学んでから農家になるのもいいかなと考えますね。技術的なことよりかは社会の中で生きていくスキルが必要かなって。どこでも人とのつながり・接し方が大事だと思いますね。ゆくゆくは農業やりたいならうれしいって感じます。農業が魅力的だなって僕たちがわからせてあげれば自ずとやってくれると思うので自分たち次第だと思いますね。 

良子さん

私もしてくれたら嬉しいなって感じかな。営業職の経験からか、(浩太さんが)確認作業を怠らないですよ。きっちりしているので、私がたまに注意されます(笑)

取材班

社会人を経験して、その学びを農業経営にも活かしているお二人ならではの意見ですね。

取材班

最後に、ワニナルプロジェクトでは『農業 × クリエイティブ』で新規就農や農業を盛り上げていきたいと考えています。高谷さんなら『クリエイティブ』と聞いたときどんなイメージを持ちますか?クリエイティブと聞くとなんだ?って思われることが多いのですよね。

浩太さん

僕は新しく無から作ること、既存のものを自分の知識などを織り交ぜてミックスさせるイメージですかね。なんだって思うだけじゃなくて本当はどうなんだろうと真摯に向き合うことも大切かなって思います。

取材班

ありがとうございます。どの質問にも真剣に答えてくださった高谷さんのお人柄が表れているなと感じます。

ご夫婦でインタビューを受けてくださってありがとうございました! 二人の出会いやなれそめを聞いて、個人的な教訓にしたことは秘密です。

ファームプロダクツファイル

①作っている代表作物

●原木シイタケ

原木ならではのうまみ! 身が厚く弾力がある! 香りがよくて味が良い! 6~8月以外出荷しています!

②作り方

原木に穴をあけて菌を埋め込む! 1本に30個開けるそうで、たかや農園さんは毎年新たに5000本の木を用意するので15万個ドリルで穴開けています…!
原木、一本一本丁寧に木を組みます。手作業で重い思いをしながら思いを込めて原木シイタケを作っています!

③他に作っている作物

●柿・栗・米

④高谷さんの目標

直売所だけではなく、アプリやインスタグラムなどの販路の開拓もよりやっていきたいですね。他に今やり始めているのはミョウガ作りです。また今の栗や柿の木の剪定・伐採を行い作業と生育の効率化を目指すことと、柿の太秋という品種を育ててみようと考えています。別の県では、柿のブランド化に成功している事例があります。良いものを作ればそれ相応の値段がつくしブランド化につながる、そういうことができたら面白いなと考えています。

⑤シイタケのおいしい食べ方

焼きしいたけを食べてみてください!

この記事を書いた人

吉成 香貫花 YOSHINARI KANUKA

茨城県内の大学に通う大学生。祖父が作ってくれた農作物に感動し、「農家のためにできることは?」の答えを求め農学部へ。学びを深める中で、「実際に就農している方の声を聞きたい」と思っていたところ青木と出会い、「ワニナルプロジェクト取材班」に参加する。農業を始めたいけど勇気が出ない。そんな方を後押しできる記事を作りたいと意気込む。